TECHNICAL GUIDE
複雑形状のゴム成形では、工法を変える前に、充填・離型・寸法管理のどこが成立を妨げているかを切り分けます。薄肉やアンダーカットを残す必要があるなら、材料、型の分割、ゲート位置など、変更できる条件から対策を選びます。形状を作れることに加え、仕上げ後の機能と量産時の再現性まで成立する組合せを探すことが重要です。
「複雑形状に対応できるか」という聞き方だけでは、必要な設計変更を比較できません。形状そのものが機能を担う部分と、製法に合わせて変えられる部分を分けると、対策案を絞れます。下表は、そのための比較の起点です。
| 形状・要求 | 残す必要がある条件 | 比較する変更案 |
|---|---|---|
| 薄肉・細いリップ | 厚さや先端形状が機能上必要か | 厚さを変えられなければ、材料と充填・離型方法を比較。変えられる部分は形状変更も候補にする |
| アンダーカット・蛇腹 | 変形させて抜けるか、型合わせ跡を置けるか | ゴムの変形を利用する離型と、金型を分割する方法を比較 |
| 中空・深い穴 | 中子を抜く開口部を設けられるか、接合部を許容できるか | 中子の取出し経路を持つ一体構造と、分割して接合する構造を比較 |
| 金属・樹脂との一体化 | 相手材、位置精度、接合部に必要な性能 | インサートの保持、接着方法、ゴムを入れる位置を比較 |
薄肉部の成形可否は、最も薄い位置の寸法だけでは決まりません。薄肉が続く面積や、隣接する厚肉部との位置関係も確認します。同じ厚さでも、小さな薄肉部と広い膜状部分を同じ条件で扱わないことが大切です。
液状シリコーンゴム(LSR)では、手で離型する際に内側の鋭い角が裂けの起点になることがあります。相談するなら「肉厚を増やす案」だけでなく、「薄肉を維持して角部を丸める案」も比較対象になります。ただし、接触面や可動部に関わる変更なら、成形性とは別に製品機能を評価します。
硬く伸びにくいゴムでは、中型から抜くときに裂ける場合があります。金型を分割する方法は対策になりますが、型の費用との比較が必要です。材質を変えられない案件では、無理抜きを続ける前提を外し、分割位置と取出し方向から検討します。
型合わせ跡を許容できない面があるなら、その面を図面上で指定したうえで金型案を比較します。中空品でも同様に、開口部から中子を抜けるかが判断の起点です。製品を分割して接合する案まで広げる場合は、接合部を含む密封性・耐久性を評価対象に加えます。
金属・樹脂とのインサート成形や、硬度の異なるシリコーン同士の一体成形には実例があります。ここで切り分けたいのは、外形の成形可否と、材料の境界で必要な性能を満たすかです。形状試作に合格しても接合性能は別に判定し、位置精度が必要な部品はインサートの保持方法まで含めて比較します。
圧縮・トランスファー・射出の比較では、成形できる形状だけでなく、材料の仕込み、インサートの固定、ゲート跡、仕上げ作業の違いを見ます。残せない跡や変更できない材料があれば、それを選定条件に入れます。
| 工法 | 選定時の着眼点 | 採用前に詰める条件 |
|---|---|---|
| 圧縮成形 | 複雑形状でも候補から外さず、金型構造と材料の仕込みを検討 | 裁断・計量・仕込みと、取出し・バリ取りを含む作業の再現性 |
| トランスファー成形 | インサートを固定してから材料を注入する構成を検討 | ゲート跡を置ける位置、ポットに残る材料、金型の複雑化と費用 |
| 射出成形 | 継続量産を前提に、材料と設備・工程の適合を検討 | 成形だけでなく、離型・仕上げ・検査まで含む量産工程 |
たとえばインサート保持が課題なら、固定後に充填するトランスファー成形を比較対象にできます。一方、ゲート跡を許容できる場所がない場合は、そのまま採用を決められません。利点に対応する制約まで並べて比較すると、工法名だけで候補を絞る判断を避けられます。
一定断面が続く長尺品なら押出、加工できる形状なら切削、接合を許容できるなら分割製作も比較対象です。先に一体成形を必須条件にするかを決めておくと、代替案の範囲が明確になります。
成形品の寸法には、金型の各側で規定される固定寸法と、上下型を合わせることで決まる型閉じ寸法があります。型閉じ寸法では、型合わせ部のバリ厚の変動も考慮する必要があります。
そのため、同じ長さ・同じ公差でも、金型でどのように寸法を作るかを分けて協議します。重要寸法を一つの型側で規定できるか、分割位置を変えられるかを金型案と一緒に検討してください。図面上で寸法線が型合わせ線を横切るかだけで判断せず、寸法を規定する面と型構造を対応させます。
型合わせ位置にある薄いリップや突起は、トリミングが最終寸法を左右する場合があります。金型の加工公差だけでなく、バリ取り後の寸法・端部状態を図面や限度見本で合意する必要があります。
測定方法も同時に決めます。ゴムは測定力で変形するため、接触式・非接触式の選択と支持状態をそろえ、完成品のどの状態を測るかまで指定します。
材料仕様や加硫条件、後加硫も収縮に関係します。材料や後処理を変更したときは、以前の金型で同じ寸法が出ることを前提にせず、変更後の条件で評価します。
同じ欠肉や裂けでも、発生の仕方によって調べる対象が変わります。下表は原因を確定する診断ではなく、最初に照合する項目を絞るための整理です。
| 観察すること | 照合する原因候補 | 次に比べる条件 |
|---|---|---|
| 欠肉が慢性的に出る | 取り数・型サイズに対する圧力不足、ゲート、仕込み、流動性 | 不足位置と型・充填条件 |
| 欠肉が突発的に出る | スコーチ、ゲート詰まり | 発生前後の材料・ゲート状態 |
| 膨らみ・内部空隙が出る | 排気不足、加硫不足による発泡 | 発生位置と排気・加硫条件。外観だけで区別しない |
| 脱型直後に裂けている | 無理抜き、応力集中 | 取出し方向と金型・材料条件 |
| 脱型直後は正常で、仕上げ後に欠ける | バリ取り時の製品部のえぐれ | 成形条件より先に仕上げ方法 |
たとえば仕上げ後だけに欠けが出るなら、脱型直後と仕上げ後の状態を残して比較します。「欠けた」という最終状態だけを共有するより、どの工程で発生したかを示す方が、変更する工程を絞れます。
試作品の合格を量産へ引き継ぐ際は、同じ図面であることに加えて、材料・金型・作業が同じかを確認します。試作時から変更する条件に対し、何を評価し直すかを決めておきます。
| 量産で変わる条件 | 再評価する項目 | 比較する単位 |
|---|---|---|
| 取り数・金型サイズ | 充填状態と寸法のばらつき | キャビティ別の製品 |
| 材料仕様・加硫・後加硫 | 変更後の寸法と要求機能 | 承認試作と変更後条件の製品 |
| 離型・仕上げ方法 | 裂け、端部の欠け、仕上げ後寸法 | 工程前後の状態 |
取り数や型サイズが成形圧力に対して過大になると、充填不足の要因になります。また、複数キャビティには加工ばらつきがあるため、一つのキャビティの合格品だけで量産金型全体を判定しないようにします。
比較表には金型費と成形単価だけでなく、仕込み、取出し、バリ取り、検査の作業条件も並べます。手作業で成立する試作案と、量産で使う予定の工程を同じ単価の前提にしないことが大切です。
金型案が複数あるなら、「初期費用」「予定数量を作る費用」「追加の仕上げ・検査」「修正が必要な場合の範囲」を分けて比較します。型費の高い案を選ぶ理由は、削減できる作業や必要な品質条件と対応させ、数量の見込みが変わった場合も判断を見直せる形にします。
仕様書の再説明を増やすより、図面上に変更不可の機能面・寸法、型合わせ跡やゲート跡の禁止位置、変更を許容する部分を示す方が、設計提案を比較しやすくなります。
「現形状・指定材質のまま作る案」と「許容範囲で形状や型の分割を変える案」を分け、各案について未成立の条件、試作で判定する項目、量産時に残る作業を回答してもらいます。他社で製作を断られた場合も、可否だけでなく障害となった条件を引き継ぐと、同じ検討の繰返しを避けられます。
シリコンゴム成形メーカーをお探しの企業に向けて、作りたい部品別におすすめのメーカーをご紹介します。
各社で対応技術や得意とする部品が異なるため、自社で作りたい部品にあったメーカーを選ぶ参考にしてください。
※参照元:サンアロー公式HP(https://www.sunarrow.co.jp/technology/rubbermolding/)
※参照元:桜シール公式HP(https://www.sakura-seal.co.jp/)
※参照元:ホッティーポリマー公式HP(https://www.hotty.co.jp/3d_service/consignment/)